+++ ZERO +++

〜4〜








その頃、舞台裏では。
一足先にひいたクリストファーはベッドに身を横たえていた。
一見眠っている風には見えるが、時折、瞼が震える事から意識ははっきりと冴え
ているようである。
彼もまた、眠りの淵に浅く腰をかけたまま思考の迷路を彷徨っていた。
有利なのか不利なのか、そのどちらでも状況に軽く溜息をつく。
弟より自由な身は、しかし、それ以上の楔を受けている。
自由にならぬ身体、いつ消えるか分からない灯火を既に覚悟していたとはいえ、
ここに来てこれ程までに悔しいと思う自分に大きく自己嫌悪を感じていた。
どちらが先に出会ったかなど問題ではない。
要はどちらが強く惹かれ、また想っているかであって…。
それも相手には負けてはいないと自負している彼であったが、残念な事に実質的
時間がそれを後押しする程には経過していない。
それこそ出会って間もない相手それも同性に……お互いが一目惚れというなんと
もはや情けない状態なのである。
「……。」
この想いが今後どんな形になるかはまだわからない。
けれど、はっきりと見えている事はあった。
クリストファーは傷ついた胸からそれがこぼれ落ちないように、身体を丸く抱え込む。
静かに闇に沈む部屋にカーテンから僅かに零れる月明かりが彼の青白い色をより
白く染めていった。
ここのところ、急速に転がり落ちていく世界情勢のせいでゆっくりと休む暇がな
かったせいか…思った以上に疲労が溜まり過ぎていたようだ。
しかし、それに悲鳴を上げる身体とは裏腹に形のないもの達はこれから先の時間
に果てしない歓喜を抱いている。
その先に何があるのか、それは誰も知らない。
だが、そこに辿り着くのは必ず自分で会って欲しいと生まれて初めて切に願った。
でも、さすがに限界を迎え始めている身体は踊る心を無理矢理に抑え込んででも
休息につこうとするのか、意識が徐々に途切れがちになっていく。
眠りの底に堕ちるこの感じを不快と思うようになったのはいつの頃からだったろうか。
二度と這い上がって来れない闇へ堕ちる恐怖心。
それはきっと命に楔を打たれた者しか分からない不安。
でも……今夜は違う。
なんとなく、明日は……否、明日からはそうではない気がする。
闇に堕ちても、きっと戻ってこれる。







やっと、光を見つけたのだから……。









-The End-











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