| +++ next door+++ 〜4〜 |
| 「…。」 そのせいだろうか、今でもその熱が残っているような気がする。 しかし、はっきりとしてきた意識の一部がそれが気のせいではないと警鐘を鳴らしていた。 「……な…に…?」 シーツの中に沈んだ今だけだるい両の手を覗き込むと、そこには見慣れた黒いジャケット。 彼はその腕の部分をしっかりと両手で握り締めていたのだった。 クレヴァニールのトレードマークともいえる、黒いロングジャケット。 戦いにおいては、風を切るそれがまるで羽のように見えるのだ。 それは舞うように剣を切る彼にとても似つかわしくて、アルフォンスの大のお気に入りで もあった。 それが、今は何故ここにあるのか? 「…。」 とりあえず、遡れるところまで記憶を辿ってみる。 激しい閃光とともに意識が途切れた瞬間、闇に堕ちたくないという必死の思いで手を伸ば したはずのそれは天使の手を掴めたのか? 確認する術はもう既に無いのだが、それは今ここでこうして居られる事が何よりの証拠か もしれない。 それにしてもだ。 何故、彼はこれを置いて行ったのだろうか。 もし、アルフォンスがどうしても放さなかったにしろ、誰かに手伝って貰えば放せないこ とは無いはずである。 それをわざわざ…。 「脱ぐのも大変だったろうにね。」 しかし、その光景を想像すると何故か可笑しくって笑いが次から次へとこみ上げてくる。 きっと、彼の事だ。 アルフォンスを起さないようにと、慎重に慎重に脱いだに違いないのだから。 その時の彼の困ったようなそれでいて真剣な表情が手に取るように分かってしまう。 さすがに腕の飾りは持っていったようだが、それにしてもそんなに彼に手間をかけさせる くらい自分は彼の服を握り締めていたのであろとうかと僅かに心の水面が波立った。 一度は正面きって告白したものの、約束の日までこの熱く重い情熱は身体の奥深くに閉じ 込めておくはずだったのに…。 無意識とは非常に怖いものである。 だが、彼は…クレヴァニールは応えてくれたのだろう。 言葉には今はまだ出せないから。 アルフォンスが望むものは叶えれる範囲で叶えようとした、彼なりの無言のメッセージ。 それが、何とも今のアルフォンスには暖かくてやるせなくて嬉しかった。 だから今度はそれをぎゅう…と腕の中に抱き込んでみる。 そうだ、ありったけの熱を君に分け与えよう。 その炎が今はこの西奥で戦っている彼の盾になれるように…。 そして、アルフォンスは再び重くなってきた瞼をそっと閉じた。 |
早く帰っておいで。 ようやく次の扉が見えてきたのだから。 その先に何があるかなんて知る由もないけれど…。 そう…。きっと、想う場所に繋がっている。 何故かって? それはね、光の天使が不器用な手で作った扉だからだよ。 -The End- |
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