Justice

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迷いの森奥深くにある時空制御塔…。
最終局面を迎えたある日、薄暗いこの古代遺跡の中でのこと。
「俺はいいんだよ。」
パンドラの箱の中に残された最後の希望はただそう呟き、先にある闇をじっと見据えて
いた。

彼の持つ力、全てを注げば今の危機は脱出できる。
もう一人…そうもう一人、彼と同じ存在の協力が必要不可欠であった。
だが、もう一人の存在はそれを拒否した。自分と自分を信じて着いてきた唯一の者の為
に…。
限りない破壊を望むヴェンツェルから世界を救う為にはパワーストーンを用いて全ての
人間をグローシアンに変える必要があった。
そして普通の人間をグローシアンに変える能力を宿した『彼』。
手段は既にそれしか残されていなかった。とにもかくにも時間がないのだ。
失われたパワーストーンを精製し、『彼』ひとりの力でそれを実行するには負担が大き
すぎる。
それでなくとも命の供給を絶たれた『彼』にとってはその行為は「消滅」を意味する。

「!! お前は!!」
『彼』が見えないという事にこれほど後悔した事はない。



お前はあの激しい戦いの中で得たほんの一時の安らぎの日に見た花火のように

鮮やかに咲いて消えてしまうというのか?

それだけは許さない!!

お前は俺に光を見せたのだから、それだけは絶対許さない!!


俺は衝動的に『彼』の白いであろう手をきつく掴み乱暴に引き寄せた。
「許さんぞ!! 何があっても俺が生かしてやる!」
『彼』の息を呑む気配が腕を介して伝わってくる。
解かっている。万が一『彼』を失わずにこの問題を解決したとしても自分達の目指すも
のが変わらぬ限り、『彼』の宿命を変えようにないことを…。
それでも…それでも皆が尽力を尽くしている。『彼』の育ての親である宮廷魔道師サン
ドラを筆頭にブラッドレー副学院長の協力のもと魔法学院も全力をもって探しているの
だ、『彼』を救う方法を!
だから俺は最も卑怯な言葉を吐いた。
「ルイセはどうする? お前が決断した時のあいつの顔を見ただろう!!」
『彼』がこの世界で最も大切な存在、義妹のルイセの名を出す。
『彼』が覚悟を決めた時、ルイセは酷く荒れた。



お兄ちゃんはどうしていつもそうなの?

私はお兄ちゃんに助けられたのに…グローシアンのくせに何もできないなんて!


血を吐くような告白だった。
グローシアン…食の時に生まれた子供はグローシュという魔法エネルギーを使用せず魔
法を使うことができる。
その中でもルイセは皆既のグローシアン。
日食や月食のグローシアンとは比べ物にならないくらい希少な存在なのだ。
おまけに、最近ではヴェンツェルが行ったグローシアン狩りのおかげでルイセは唯一のグ
ローシアンとなってしまった。
力がある故の苦悩。
そんな彼女をミーシャとカレンが数日付き添って慰めたが今でも酷い有様だ。
『彼』もそんな情景を思い出したのか、身体が震えとともに強張っていった。
だがそれもつかの間、直に『彼』は全身の力を抜き、隙をついて俺の手からそっと自分の
腕を抜き取る。
「…時が早まっただけだ。何も問題はない。」
そう、言い捨てると闇の中に消え去っていった。
俺は年甲斐にも無く例えようの無い怒りに身を震わせ、その場に立ち尽くした。
過去、傭兵団にいた頃、とある事件の最中に失踪した団長をじっと待つのが嫌で追い続け
た。
やっと巡り合えたと思えばつかの間で、この手から永遠に失われてしまった。
また時をを置かずにして、俺は失うのか?
異なる魂の同じ姿をまた…。






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